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鍛造加工時の加熱温度は

指輪

「鉄は熱いうちに打て」と言いますが、熱いというのは何度ぐらいのことを言うのでしょうか?
結婚指輪を作る場合、金属を熱しすぎると素材によっては溶けてしまい、温度が低すぎれば思ったような形にはなりません。結婚指輪の耐熱温度ですが、「熱間鍛造」と「温間鍛造」、「冷間鍛造」によって分かれます。鍛造加工時の耐熱温度について、結婚指輪の素材別にご紹介します。

熱間鍛造の耐熱温度
熱間鍛造とは、結婚指輪の素材となる金属が赤くなるまで1000℃以上の高温で過熱した後、ハンマーなどで叩いて加工する方法です。1000℃以上の高熱に耐えられる金属としては、鉄が1535℃、パラジウムも1555℃なのでほぼ同じ温度、プラチナで1769℃となっています。「鉄は熱いうちに打て」と言うのは、文字どおり鉄の融点が高いことを示しています。ちなみにゴールドの耐熱温度は1064℃、銅は1084.5℃ですから、ギリギリ熱間鍛造できる金属の部類に入るでしょう。

温間鍛造の耐熱温度
温間鍛造というのは、約600℃~900℃まで金属を加熱してから結婚指輪へと加工する方法です。銀の耐熱温度は962℃なので、温間鍛造が適しているかもしれません。耐熱温度が1064℃のゴールドや1084.5℃の銅あたりも、高温で熱する熱間鍛造では溶けてしまうおそれがあるため、温間鍛造を選ぶ場合があるのではないでしょうか?
特にゴールドは種類によって、銀や銅などの素材も含まれている場合がありますから、指輪づくりの温度に気をつける必要があります。

冷間鍛造の耐熱温度
冷間鍛造になると金属を加熱せずに、室温のまま加工することになります。「冷間」と言うと、金属を冷やすかのようなイメージがありますけど、熱を使わない常温による作業となります。冷間鍛造は熱を加えないから仕上がりがキレイです。ただ、常温に近い温度による加工となるため結婚指輪の素材が硬く、加工するにはより強い力が必要になります。複雑な形の結婚指輪を作るのには向かない方法でしょう。

異なる素材の結婚指輪
結婚指輪は、プラチナやゴールドに銀や銅、パラジウムなどの耐熱温度の異なる金属をまぜて作られています。硬すぎて加工のしにくい金属は、ほかの金属をまぜて加工しやすくしてデザインを施すことになります。融点というのは、金属がとける際の温度を指します。金属がとける融点が異なるために、どんな金属の素材がどれぐらいの比率でまざっているかによっても、鍛造方法が違ってくるでしょう。

火事で溶ける?結婚指輪
家が火災にあった場合に、燃えてしまう物と燃え残る物があります。結婚指輪もそのひとつですが、金属の素材によって溶け方が違ってきます。火事が起きた場合の温度ですが、だいたい1000℃~1200℃と言われています。耐熱温度が高いプラチナは火事にあったとしても、形が残っていることになります。ゴールドの指輪は溶けてしまいますが、溶けた指輪の形がなくなるだけで、冷えて固まれば金属自体は残ります。プラチナの結婚指輪が多くの人に好まれるのは、火災に遭う場合を考えてかもしれません。火事で焼けた後に見た目が変わってしまったとしても、素材自体の価値は変わらないということです。

デザインも多種多様に変化できる
金属を適度に過熱してやわらかくすることで、複雑な形の結婚指輪を作ることができます。加熱の温度が高ければ高いほど、より自由な加工が可能になります。ただ、金属により耐熱温度に違いがあるため、適切な温度で加熱することが大切です。結婚指輪の素材として使われることの多いプラチナやゴールドですが、プラチナの耐熱温度は1,769℃、ゴールドは1,062℃です。火災にあった後でゴールドが溶けた場合でも、プラチナのほうは残ることになります。