Column コラム
ハート&キューピッドとは ~鍛造指輪のこだわり⑤ 6/9
■ハート&キューピッドとは
4Cのうちの「カット」は、ラウンドブリリアントカットのダイヤモンドにのみ付される評価項目です。
ダイヤモンド全体が美しい形になるような、正確なカットができているか。その仕上がりはどうか。そうした観点から評価され、「EX」を最上として5段階に評価されます。 こうしたカットの正確さ、対称性を評価するものに「ハート&キューピッド」があります。
ダイヤモンドを台の上に置き、特殊なスコープで見てみると、その表面には矢のような模様が、そして裏面にはハート模様が、それぞれ放射状にきれいに並んでいるのを見ることができます。これが「ハート&キューピッド」です。矢模様をキューピッドの射る矢になぞらえたあたり、いかにもダイヤモンドにふさわしいロマンティックな呼び名ですね。
さて、このハート&キューピッド、いかに対称性の良い正確無比なカッティングが行われたかの証であり、鑑定書にサブレポートとして添付されることもあります。ですからすべてのダイヤモンドで見られる現象ではありません。
実際にいくつかのダイヤモンドを調べてみると、ハート&キューピッドがはっきりと表れているもの、薄くぼんやりとしているもの、明らかに形が崩れてしまっているものなど、さまざまです。この模様は光の屈折によって表れるものですから、ダイヤモンド全体が正確にカットされていないと、見ることができません。
そして、この模様がはっきりと見える……カットが正確に施されているということは、それだけダイヤモンドの輝きが強く表れるということに直結します。 ダイヤモンドはもともと屈折率が高く、きらびやかな輝きが身上です。それをよりいっそう際だたせるために生み出されたのが、ブリリアンカットです。
これはダイヤモンドの上部から入ってきた光が内部で反射を繰り返し、再び上部へと放たれることで、キラキラとした輝きを強調する形状になっています。ハート&キューピッドは、このブリリアンカットに特徴的なものです。
ただ、このハート&キューピッドは「カットの対称性の正確さ」を表すものではありますが、その他の要素……カラーやクラリティはもちろん、磨きや仕上げのクオリティとは何の関係もありません。宝石店によっては「ハート&キューピッドが見えるから、最高のダイヤモンドだ」とうたっているところもありますが、これはカットの対称性が優れている、というだけのことでしかありません。過剰に信奉しないよう、注意が必要です。