Column コラム
『温間鍛造』とは?
温間鍛造とは
鍛造はつくられる過程の温度によって3つに分類することができます。材料に熱を加えずに常温で加工する「冷間鍛造」、材料の再結晶温度以上(約1000〜1200℃)になるまで加熱してから加工する「熱間鍛造」、そして今回紹介する「温間鍛造」はこれらの中間の温度である約300〜850℃に加熱します。
加熱温度に幅があるように思われたかもしれませんが、これは手を加える素材の特性や製品の形状によって変化します。この幅のある温度に対応するには、それぞれの温度帯によって加熱装置(抵抗加熱器・誘導加熱器)が必要になり、同時に処理温度が上がれば素材に接する部分に対する冷却対策も必要になります。
温間鍛造のメリットとデメリット
温間鍛造の工程は大きく分けて3つで、「押出方式」「バリ出し方式」「密閉方式」の冷間鍛造と同様の成形方法があります。
温間鍛造のメリットは、冷間鍛造ではなかなか再現できないような複雑な形状の部品づくりや、”高炭素鋼”や”SUS304″といった加工が難しい素材も、加熱して延性が向上することによって成形できるようになります。加工しやすくなることは、金型の消耗も減るのでコスト削減につながるというメリットがあります。
また、熱間鍛造では失われがちな寸法精度という面も、温間鍛造では高精度な製品をつくることができます。熱間鍛造でネックになりがちな、スケール(鋼材の表面に生成される酸化皮膜)が付着しにくく、後処理を省くことができます。
一方温間鍛造には、電気によって素材を加熱するため、温度管理が難しく機材設備も大型になり、初期投資費用がかさんでしまうというデメリットが存在します。
また、冷間鍛造に比べて精度が得にくかったり、熱間鍛造に比べて靱性が劣ったり成形工程数が多かったりするという特徴もあります。しかし、温間鍛造そのものが冷間鍛造と熱間鍛造の両方のメリットをもつ製造法なので、冷間鍛造や熱間鍛造に対してこのようなデメリットがあることは仕方の無いことなのかもしれません。
まとめ
温間鍛造は、古くから行われていた熱間鍛造と、第2次世界大戦の最中に開発された冷間鍛造の2つのメリットを組み合わせた製造法として誕生しました。製造方法によって、さまざまな特徴があることをお分かりいただけたのではないでしょうか?