Column コラム

打撃加圧で鍛える鍛造
鍛造は金属の加工方法のひとつ。「鍛」という字には「鍛える」という意味があり、鍛造とはこの文字が表しているように金属を鍛えて加工します。

では、どのような方法で鍛えるのでしょうか。それはハンマーなどで打撃を加えるのです。この打撃加圧によって金属内部の空隙が潰され、組織が緻密かつ均質になり、金属に粘り強さが生まれます。このように鍛えた金属は硬いだけでなく、引っ張り強さも備えているのです。

鍛造を用いた金属加工の中でも様々な分類があります。

作り上げる製品の形状に応じた金型を使う鍛造法は型鍛造と呼ばれます。それに対し、金型を用いない鍛造法は自由鍛造と呼ばれています。

自由鍛造で必要なものは叩く台とハンマーだけ。これだけで自由に形を作り上げることができます。この方法は大型部品を作る時や少量生産品に適しています。職人がハンマーで金属を叩きながら力加減や叩く方向を調整して成形していきます。日本刀、高級な鎌や包丁などに用いられることが多い技術です。

また、この方法では全く同じものは作れません。同じように作っても完成品には微妙な違いが生じてしまうのです。この特性を活かして作られる指輪もあります。職人が自由鍛造で作る指輪は正解にひとつだけの指輪です。つけ心地が良く、耐久性のある鍛造指輪はマリッジリングに選ぶ人が多い様子。

型鍛造には叩く台とハンマーに加えて金型が必要になります。製品の形を彫り込んだ金型を上下ひと組で用意し、そこに鉄を入れて圧縮するのです。この方法は小型部品や量産品に適しています。型鍛造の長所は、自由鍛造よりも寸法精度が高いため複雑な形状の製品でも効率よく作り上げることが可能です。

型鍛造の短所はできあがった製品のまわりにバリと呼ばれる型からはみ出た金属を取り除く作業が必要になります。また、バリができるぶん、自由鍛造よりも製品歩留まりが悪くなります。

自動車部品や産業機械器具、農業機械、鉱山機械、土木建築機械などに使われる部品の多くは型鍛造によって作られています。

型鍛造品ができあがるまでには4つの工程が必要です。

最初は材料の切り出しです。金属の塊から必要量を切断します。次に、金属を加熱します。熱を加えることで金属を成形しやすくするのです。

次からいよいよ金型が登場します。まずは金属を粗型に入れ叩き、棒状だった金属の塊を最終形状にざっくりと近づけますその次に、仕上げ型に入れて叩くことで製品寸法に仕上げます。最後にバリを取り除き、表面処理などを行います。

奥の深い鍛造の世界、知れば知るほど鍛造が身近に感じられてくるのではないでしょうか。